| 針刺し事故 |
針刺し事故などでHIV感染患者の血液(体液)に曝露されたとき
(厚生省通達平成9年4月30日および米国公衆衛生局からの暫定的勧告より)
HIV感染患者および感染が強く疑われる患者の医療行為時に針刺し事故を起こした場合あるいは粘膜や皮膚が血液、体液などで曝露されたときはこのマニュアルに従って対処してください。
1)事故者の自己決定に資する情報(MMWR, June 7, 1996 / Vol. 45 / No. 22)
・針刺し事故によるHIVの感染の危険は0.3%と報告されている。
・飛沫などによる粘膜への曝露では0.1%、皮膚への曝露では0.1%以下と報告
されている。(皮膚への曝露の場合、HIV量が多いとき、長時間あるいは広範囲に曝露さ
れたとき、正常状態でない皮膚面が曝露されたときなどに感染の危険が高まるとされている)
・針刺し後のAZT予防内服により抗体陽性化(感染成立)が約80%減少した
との報告がある。(HIV陽性妊婦がAZTを服用した場合、児への感染が67%
減少したとの報告がある)
・3者(AZT,3TC,IDV)併用はAZT耐性HIVに対しても有効性が期待できる。
・3者併用はAZT単独よりも副作用が多い(次ページ参照)。3者併用の胎児へ
の安全性は確認されていない。
2)直ちに水洗い!
針刺し部(創部)の血液をしぼり出しながら直ちに水洗いする。
曝露部の粘膜、皮膚をただちに水洗いする。
3)実際の服用薬(薬剤部に常備)
内服前に血清保存用に血液5ml採血。時間外では冷蔵庫保存。
曝露後の有効な予防のためには1回目の服用が最も大事。
・1回目に必ず3剤を服用する。(危険性が高いとき--3/3参照)
・できるだけ速やかに(少なくとも1-2時間以内)1回目を服用する。
(1)1回目
| AZT(レトロビル) 200 mg
3TC(エビビル) 150 mg Indinavir(クリキシバン) 800 mg |
(2)2回目(1回目の8時間後)
|
AZT(レトロビル) 200 mg Indinavir(クリキシバン) 800 mg |
(3)3回目(2回目の8時間後) 1回目と同じ3剤を同量服用する。
4)HIV陽性者ではしばしばHBs抗原も陽性である。
必要であれば抗HBグロブリンの予防投与。(→HBの針刺し事故マニュアル参照)
5)抗HIV 薬の服用期間 以下の処方で1ヶ月間服用する。
Rx) AZT(レトロビル) 600mg 3x毎食後
3TC(エビビル) 300mg 2x朝・夕食後
Indinavir(クリキシバン)2400mg 3x毎食後
6)抗HIV 薬投与の注意点および可能な変更点
| AZT:
消化器症状の強い場合には、400mg, 2x朝, 夕食後 もしくは 300mg, 3x, 毎食後 への変更でも効果は期待できる。 |
| 3TC: 半年以上3TCの投与された慢性B型肝炎患者において中止後に肝炎の悪化した報告がある。1ヶ月以内の短期服用後における肝炎悪化の報告はないが注意は必要。むしろ感染リスクの低いと考えられる場合には、B型肝炎の人は3TCを服用しない。 |
| Indinavir(IDV); (1)腎結石の副作用がある。予防のために1日1.5リットル以上の水分をとる。食後の服用にかえることで腎結石の頻度を下げることも可能。消化器症状の強い場合にも食後服用に変更可能。 (2)ビリルビン値が5mg/dl前後までは上昇することがあるが、継続服用可能。 (3)この薬剤は吸湿性がある。吸湿により薬効が低下するので、薬剤の保存状態に注意。 |
7)二次感染の注意
曝露後は予防薬服用の有無にかかわらず、感染していないことがほぼ確定できる曝露後3ヶ月目の検査結果がわかるまでは、相手および妊娠した場合の胎児への感染回避の目的から避妊する。さらに、予防薬を服用する対象者に対しては少なくとも薬剤服用中は、妊娠した場合の胎児への薬剤の影響を避けるために避妊する。8)危険群別の予防的化学療法剤
米国公衆衛生局の暫定的勧告(MMWR, June 7, 1996 / Vol. 45 / No. 22)
針刺し事故
| 血液 最危険例(#1)
高危険例(#2) 低危険例(#3) | →AZT plus 3TC plus IDVの服用を強くすすめる。
→AZT plus 3TC, +/- IDVの服用を強くすすめる。 →AZT plus 3TCの服用をすすめる。 |
| 血液が混入した体液
感染の危険がある体液(#4) 組織片 | →AZT plus 3TCの服用をすすめる。 |
| 上記以外の体液(例えば尿) | → 抗HIV薬の服用はすすめない。 |
#1:最危険例
血中にHIVを大量に含んだ患者(例えば急性期の患者や末期の患者)から
の大量の血液に曝露された場合。
(例えば患者の動脈又は静脈に留置されていた大きな径の針を深く刺した)
#2:高危険例
大量の血液に曝露されたか、または血中にHIVを大量に含んだ患者(上記)
からの血液に曝露された場合。
#3:低危険例
上記#1、#2のどちらでもない。
(例えば無症候性HIV感染者の血液が付着した縫合針(管腔なし)を刺した)
#4:感染の危険のある体液 → 精液、膣分泌液、脳脊髄液、関節液、胸水、
腹水、心のう液、羊水
口腔、鼻、眼の粘膜への曝露--血液または体液の飛沫を浴びたときなど
皮膚への曝露(つぎの条件下での)--HIV量が多いとき、長時間曝露されたとき、広範囲に曝露されたとき、あるいは正常状態でない皮膚面が曝露された時
| 血液 | →AZT plus 3TC,+/-IDVの服用をすすめる。 |
| 血液が混入した体液
感染の危険のある体液(#4) 組織片 | →AZT, +/- 3TCの服用をすすめる。 |
| 上記以外の体液(例えば尿) | →抗HIV薬の服用はすすめない。 |
針刺し事故でB型肝炎患者の血液に曝露されたとき
| 48時間以内にHBs抗原抗体の検査が不可能な場合は前採血したのち直ちにヘブスブリンIを静注する。
休日明けの検査で抗体が陰性であれば労災の手続きをする。 抗体が陽性であっても費用は病院負担となる。 |
針刺し事故等
↓
直ちに水洗い---------------------------------同時に目撃者の確保
↓
事故者の所属科の急患として診療を申し込む---------------時間外事務室
(針刺し事故等の旨を告げる)
↓
当該診療科からヘプスブリンを注文-----------------時間外薬局から受領
ヘプスブリン1000単位(体重70Kg以下)
2000単位(体重71Kg以上)
↓
前採血(5ml)し冷蔵庫に静置----------------------休み明けに輸血部へ
ヘプスブリン静注
↓
休み明けに、
総務課職員係へB型肝炎汚染事故の旨告げる-----総務課職員係から医事課へ
↓
医事課外来係で診療手続きを行う
↓
検体を輸血部へ検査オーダー
↓
HBs抗原、抗体検査の結果判明
↓
総務課職員係へ報告モ公務災害の事務手続き
HBs抗原、抗体検査の結果、抗体陰性(陽性の場合であっても、抗体価が50mIU/ml以下)の場合は公務災害手続きを行う。
針刺し事故関連サイト