HOME > 精液からHIV除去研究の実際 > ウイルス除去を目的とした改良Swim-Up法

はじめに

Swim up法も研究者によって方法が異なり、結果としてウイルス除去率も異なります。

私たちは改良した方法によってHIVが完全に除去されることを確認しています。

精液希釈と夾雑物除去の必要性

精液には前立腺由来の成分や金属結晶の他に、尿道の雑菌などが混入しています。

そのまま分離液に重層して遠心すると精子より重い成分が底の精子分画にHIVを巻き込んでしまいます。

私たちは遠心前に精液を希釈して静置後に上層の精子浮遊液を回収し、フィルター濾過して遠心分離しています。

ウイルス分離液と濃度設定の選択

HIVの分離液の種類や濃度の設定により、ウイルス除去率や精子の回収率が異なります。

最近ではPureceptionが一般的ですが、PureceptionによるHIV除去効率はパコールよりも低いことが共同研究者の久慈先生たちの研究で判明しています。

そこで私たちは98%~80%パコールを用いた連続密度勾配により精液中のウイルス除去率を高めることに成功しました。

遠心分離後の精子分画の回収法

遠心分離後に、一番底の洗浄精子をどのように回収するかも問題です。

遠心分離後、HIVは上層に分布し、白血球は中間層に分布しています。

上から順に吸引して精子を回収すると管壁を伝わりHIVが混入する危険性があります。

私たちは共同研究者の兼子先生が開発した特殊試験管を用いて上層成分を完全に遮断して底の精子を回収しています。

このことはお料理にたとえると、煮込み料理で上層に浮かんだあくを完全にとれるかどうかと似ています。

あくをウイルスや白血球だと考えてください。

お玉でどれほど丁寧にすくっても、あくは鍋の端を伝って落ちてくるため、上から取っていては完全に取りきることはできません。

あくを完全に除去して下の成分を取り出すためには鍋を密封して鍋の底に穴をあけて回収すれば、あくが混じることはありません。

Swim up法の相違

従来のスイムアップ法は精子浮遊液に培養液を重層して泳いで上る精子を回収していました。

遠心後の精子を培養液で洗浄し、そこに培養液を重層すると比重差が少なくウイルスを撹拌してしまいます。

液体の上に液体を乗せると混じってしまうのは当然です。

私たちは98%パコール液の最下層の思い精子液を底に静置し、泳いで上る精子を回収しています。

体外受精と人工受精の比較:安全性と課題

体外受精は人工授精に比してHIVの2次感染防止の面では数段優れています。

人工授精でHIVが混入した精子を子宮に注入した場合、子宮内の細胞に感染する危険性があります。

体外受精で卵を取り出して精子と培養する時にHIVがもし混入していたとしても卵には感染せず、HIVの感染性は2日目には10分の1以下に低下します。

さらに培養液を2日目に交換し、受精卵を洗浄すると、たとえ精子液にHIVが混入していても相当減少できます。

我々は胚移植前に培養液中のHIVが全くないことを超高感度PCRで確認しています。

しかし、体外受精は費用が高く、排卵誘発剤による過剰刺激症候群など女性への負担が大きいのが欠点です。

顕微授精(ICSI)について

運動性の良い精子を1匹回収して卵細胞に注入する顕微授精によっても2次感染無く、妊娠出産できています。

しかし顕微授精自身の安全性を問題視する意見もあり、どの方法を選択するかは産婦人科の先生方とご相談ください。

我々の方法によって選別された精子の質がよければ子供の異常が少なくなるかどうか、今後検討していきたいと考えています。

HIV感染者精子における問題

HIV感染者の多くは、精子の数が減少し、奇形率も高く、運動率も低下しており、Swim upで回収可能な精子は極めて少ない場合が多く、HIV除去率を高めた私たちの方法では人工授精で妊娠する可能性が低いと思われ、体外受精を実施してきました。

今後精子回収率を高める研究などにより、女性への負担が少ない人工授精の検討も進めたいと考えています。

↑ページの先頭へ