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ヒト精液から精子とHIVの分離

精子調製は、種々の方法を組み合わせて各種授精法に対応した性状を有する精子分画を得ます。

精液中の除去対象とその除去法を表1にまとめました。

HIVは、精漿中に浮遊しているウイルス粒子と感染細胞の両者を除去する必要があります。

浮遊ウイルス粒子は細胞(精子)との粒子サイズ、密度差を利用した沈降速度差遠心分離法、沈降平衡法、さらに精子の運動性に基づくSwim up等を組み合わせることにより除去します。

さらに感染リンパ球は、精子との浮遊密度差を利用して除去します。

病原体除去技術の確立とともに洗浄精子懸濁液内残存ウイルスを超高感度測定し、除去の確認を行う必要があります。

表1 精液中の除去対象とその分離法

除去対象 方法
他細胞(リンパ球等) 密度勾配遠心分離法
非細胞異物(精液内結石、ムチン、外尿道口に由来する繊維) フィルター濾過(20µm以上)、自重沈降、密度勾配遠心分離法
精漿 密度勾配遠心分離法
非運動精子 密度勾配遠心分離法、Swim up
細菌 抗生物質(殺菌)、密度勾配遠心分離法(除菌)
HIV 沈降速度差遠心分離法、Swim up

図1 Separable Fine Neck Tubeを用いた精子分離

細く絞られた管底に精子は濃縮される。

われわれはHIV陽性男性の精液からPercoll沈降速度差遠心分離法およびSwim upを用いたHIV除去法を開発しました。

精子調製には、Separable Fine Neck Tube(SFNT)を用います。

SFNTは図1に示すように、底部を強く絞った形状をしたガラス製遠心分離チューブであり、その狹部にカットラインを有しています。

図2に分離法を説明します。

  1. 精子希釈、結石等の自重沈降
  2. フィルター濾過
  3. 精子濃縮
  4. SFNTによる精子分離
  5. 遠心分離後、SFNT狹部のカットラインを折切、上清を吸引除去
  6. キャピラール-Swim up法

図2 HIV除去を目的とした精子分離操作

精液採取は3~5日間の禁欲後に用手的に精液を採取します。

精液は滅菌した広口容器に回収し、室温で30分間液化させます。

精液量を測定し、顕微鏡観察により精子濃度、運動率等の一般精液所見を記録します。

精液は射精に際して外尿道口の常在菌で汚染され、射精後の放置時間が延長するのに伴い菌数が増加します。

培養操作が伴う体外受精-胚移植では細菌の混入は不可であり、密度勾配遠心法、Swim up等による除菌を行います。

精液内には微少な結石、ムチン用物質、繊維(おそらく下着に由来する)が混在し、繊維表面には細菌のコロニーがみられる場合が多く、洗浄精子からの異物除去は重要です。

まず精液をHanks液等の培養液で2~3倍に希釈、混合した後、滅菌した試験管に移し、結石等を自重沈降させます。

ついでムチン用物質、繊維等を20µm孔径のメッシュで濾過する。濾過した精子を新たな試験管に移し、管底にPercoll 0.1mlを導入して遠心分離し、Percoll層上に濃縮された精子を回収します。

浮遊HIVは上清に残るので、この時点でウイルス量は大幅に減少します。

SFNT内にはPercoll連続密度勾配を作成します。

濃縮精子を培養液で数倍に希釈し、形成した密度勾配に層積し、遠心分離を行います。

従来法では遠心分離後に上清をスポイト等で吸引、除去します、これではチューブ内壁に付着したウイルスを含む不純物が流下して沈澱を再汚染します。

遠心後、本法では沈澱が10µl程度に濃縮され、さらにカットラインでチューブを折切することにより、沈澱を汚染することなく回収できます。

密度勾配担体を用いた遠心分離により精子調製した場合、精子は遠心担体に懸濁しています。

最終的に担体の除去とHIVの最終的な除去、さらには運動精子の選別を目的としたSwim upを行います。

本法はHIV除去に不可欠でありますが、精子回収率が低い点が問題です。

HIV除去過程では、通常の精子調製に比してさらに厳密なキャピラール-Swim up法を行います。通常は培養液を満たした容器に細針を挿入して濃縮した精子を管底に導入します、針外壁に付着した精子、HIVが培養液中に拡散するのは避けられません。

本法では予めキャピラールを培養液内に静置し、この中に細針を挿入して精子の導入を行います。

キャピラール内は上述した針外壁に付着した精子、HIVで汚染されますが、培養液内への拡散を回避できます。

通常は37℃で30分間静置し、精子のSwim upを図ります。

培養液回収時にはキャピラール内容物の漏出を防ぐため、キャピラール上端を閉封してから培養液の回収を行います。

精子凍結保存

分離した精子はいったん凍結保存し、精子中のウイルス陰性を確認します。

以下にヒト精子凍結保存の方法を述べます。

ヒト精子凍結には、培養液に凍結保護物質としてグリセリン、卵黄水可溶性分画、ショ糖を含有する凍結保存液を使用します。

すなわちグリセリン、ショ糖には脱水および細胞内氷晶形成抑制、卵黄水可溶性分画の作用機序には不明な点が多いですが、細胞表面を被覆作用があると考えられています。

精子凍結法として

  1. 液体窒素に直接浸漬法
  2. プログラムフリ-ザー法
  3. 液体窒素蒸気法

があります。

1は精子蘇生率が悪く、2は精子に用いるには凍結速度が遅く、高価なために両法ともあまり行われなくなりました。

その結果、高い精子蘇生率が得られ、精子個別凍結が可能で安価な液体窒素蒸気法が多く用いられるようになりました。

われわれは図3に示した可変型二重腔容器を開発し、簡便な液体窒素直接浸漬法を用いても高い精子蘇生率が得られるようになりました。

すなわちSwim upした精子と凍結保護剤等量混合して数分間平衡化を行います。

その後、低速で遠心分離して精子を沈澱、濃縮します。

上清を除去し、濃縮された沈澱を内容器に入れます。

これを外容器に装着、フタをして直ちに液体窒素に投入、凍結します。

本法では外容器と内容器の間の空気が液体窒素蒸気の代替となり、適当な凍結速度が得られます。

保存は液体窒素容器内で行います。

凍結精子は、約30℃の微温湯中で振盪して、融解します。

融解後直ちに培養液でゆっくりと希釈して凍結保存液を除去します。

図3 ヒト精子凍結に用いる可変型2重腔チューブ

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